華やかな表舞台、その奥にある現実
カジノというと、煌びやかなネオン、きらびやかなドレス、そして高額チップが飛び交う非日常の空間。
そんな舞台の中心で活躍する存在が「ディーラー」です。
ディーラーといえば、無表情で淡々とゲームを進行する冷静な存在、というイメージを持つ人が多いかもしれません。
でも、実はその内側では、感情や葛藤が渦巻いていることも少なくありません。
私は、某アジアの大型カジノで約4年間、ルーレットとバカラのディーラーとして勤務していました。
今回はその経験をもとに、「ディーラー目線で見たカジノの裏側」や「本音」を、少しだけお話ししたいと思います。
ディーラーの一日:完璧な演技の連続
ディーラーの仕事は、ただカードを配ったりルーレットを回したりするだけではありません。
実際には、次のようなスキルと集中力が常に求められます。
- ミスの許されない手元の操作
- ベット額と配当の瞬時の計算
- テーブル上の全体把握(不正チェック含む)
- プレイヤーとの程よい距離感の保ち方
特に大変なのは、「常に平常心を装うこと」。
客が大声で叫んでも、チップをテーブルに叩きつけても、ディーラーは一切感情を表に出してはいけません。
勝って調子に乗る客、負けて怒鳴る客、酔って絡む客…
そんな人たちに笑顔で対応し続ける“演者”でいることは、想像以上に神経を使います。
ある意味、ディーラーとは**“静かな俳優”のような存在**なのです。
裏話①:実はプレイヤーのことをよく見ている
よく聞かれるのが、「ディーラーって客の顔を覚えてるの?」という質問。
答えは、「覚えています」。というよりも、**“観察している”**と言ったほうが正しいでしょう。
- どの客がどの席に座りやすいか
- どの客がチップを豪快に使うか
- 誰がルールをよく知っていて、誰が初心者か
- どの客が不機嫌になりやすいか
これらは自然と覚えてしまうものです。
なぜなら、それによって対応の仕方を微妙に変える必要があるからです。
例えば、賭け金の大きな“ハイローラー”には少し丁寧に接しますし、初心者にはなるべく安心感を与えるようにトーンを和らげたりもします。
カジノの“おもてなし”は、接客業のプロとしての気遣いでもあるのです。
裏話②:「この人、勝つだろうな」は意外とわかる
これもよく聞かれる話。「ディーラーって、誰が勝ちそうとか感じる?」
正確に予想するわけではありませんが、“勝てる雰囲気”を持っているプレイヤーは確かにいます。
それは、
- 感情に流されず、淡々とプレイする人
- 引き際がはっきりしている人
- 周囲の騒ぎに影響されない人
こういうプレイヤーは、勝ち負けに一喜一憂せず、自分のペースでプレイを続けます。
ディーラーの目から見ても「この人は強いな」と感じることがありました。
逆に、負けが込んでくるとすぐに態度が荒れる人、連勝に浮かれてベット額を倍々にする人は、勝負に弱いという印象が残ります。
つまり、カジノで勝つ人は、精神的に安定していることが多いのです。
裏話③:チップの渡し方で「育ち」が見える
実はディーラー同士でよく話題に上がるのが「チップの渡され方」。
同じ$10でも、渡し方ひとつで印象がガラッと変わります。
たとえば、
- 「Thank you」と言って笑顔で渡す人
- 無言でポンと置く人
- 投げるように渡す人
- 自分の勝利の演出として渡す人
前者のように丁寧な人は、自然とテーブルの雰囲気も良くなります。
チップをくれるかどうか以上に、“人としての品”や“思いやり”が見える瞬間でもあるのです。
もちろん、ディーラーはチップが報酬の一部でもあります。
ですが、金額以上に、「気持ちの良いやりとり」をしてくれる人には、心から感謝したくなります。
最後に:それでも私は、カジノを嫌いになれない
ディーラーとして働く中で、精神的に疲れる日もありました。
ときには理不尽な客の言葉に悔し涙を流した夜もあります。
しかし、**だからこそ見えた“人の本質”**が、今でも心に残っています。
勝っても偉ぶらない人、負けても笑って帰る人、他人に優しくできる人。
そういう人々に出会えたからこそ、私は「この仕事をしてよかった」と思っています。
そして何より──
カジノには、“人間が丸裸になる瞬間”がある。
それを間近で見つめ続けた経験は、私にとってかけがえのない財産です。
もし、あなたがいつかカジノに行くことがあれば、ゲームの勝ち負けだけでなく、
その空間に流れる「人間ドラマ」にも、少しだけ目を向けてみてください。
きっと、見えてくるものがあるはずです。
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